僕の実家は、自然がとても豊かに残る四国地方の山間部にあります。周囲を山と川に囲まれたこの地域は、その大らかな環境にふさわしい優しい人が多く住んでいて、僕は子供時代をそこで過ごしました。
どれくらい大らかな田舎か、実感して頂くために一つ例を挙げてみれば、「一年中、家の施錠をする必要が無い」ような地域性だと言うことが出来ます。旅行などでどこかに遠出する際なども、都会の人なら「しっかり戸締りして出かける」形になると思いますが、僕の実家の方では「隣家の人に一声かけて出発する。戸締りはしない」という格好になるのです。
僕は高校生のころまで、このような環境で育ったため、大学進学で都心で一人暮らしを始めた時は色々と大変でした。いわゆる「カルチャーショック」と言うのでしょうか、まず学校に行く際に玄関にカギを掛けることになかなか慣れませんでしたし、夜も施錠して眠ることに違和感がありました。
ですが、人間何にでも慣れるものです。この賃貸アパートで自活を始めてもう一年が経ち、「カギを掛ける」という習慣にもすっかり馴染んでしまいました。今では「僕にとって、カギの数が安心の数です」と言えるほどだと自分では思っています。
愛媛の実家に帰った際、おそらくは都会の施錠をする習慣とのギャップに苦しむんだろうなと思いながら、今日も玄関にカギを掛けて出かける僕なのでした。