トイレの鍵が壊れて中に閉じ込められた話

toire_kagi電気の保守点検の仕事をしているので、いつも色々な会社さんに訪問します。そこで実は最近、ある会社の受付の女性が気になっています。今時珍しいセミロングの黒髪で、少しぽっちゃり目の色白の女性で、いつも私を笑顔で迎えてくれる人です。

電気工作物の点検には、それらの機械がある建物に入らないといけないのですが、そこには大抵、鍵がかかっています。その鍵を渡してくれるのが受付の女性なのです。訪問前日に電話をして、明日が点検の日だと確認の連絡をして、翌日会社に訪問すると彼女が鍵を用意してまっていてくれます。鍵を借りて施設に入り、点検を済ませたらまた施錠をして受付の彼女に鍵を返しに行きます。彼女と接触できるのは鍵の受け渡しの前後だけなのです。

ほとんど一目ぼれに近く彼女が気になっているのですが、勇気のない僕は彼女と、決まりきった会話しかできません。ほんの一言、気の利いたセリフが何か言えれば、その後少しでも会話が続くかもしれない。そう思って毎月会社に行くのですが、勇気が出ずに終わってしまいます。でも今日は、何か必ず一言を、そう思って出たのは、お手洗いをお借りできますか。の一言でした。でもこれは、トイレを借りている間は会社に居られるのですから、僕にしては上出来な発言だったと思います。彼女はやはり優しく微笑み、気持ちよくトイレまで案内してくれました。

いつもと違う会話ができた。これだけで勇気が出て、前に進めそうな気持ちになりました。トイレから出たらお礼を言おう。そしてさらに、何か言えないか。そんなことを考えてニヤけながらトイレから出ようとしたら、鍵が開きません。驚いてドアノブを見ると、ただボタンを押すだけの、昔ながらの鍵のようです。でも、ドアノブを回そうにもドアノブは回らず、鍵も開かないのです。これには僕も軽くパニックなり、次に入ってきた男性社員に力ずくで開けてもらった時には、汗だくになっていました。